この記事で分かること

前回、ペース走が狙い通りだったかは平均心拍と最大心拍の差で見ると書きました。同時に、こうも書きました。

何bpm差なら合格、という共通の基準はありません。

これは正直なところですが、読んだ方には宿題が残ります。差を測ってみても、その数字が良いのか悪いのか、その場では分からないからです。基準を作るには数回ぶんのデータが必要で、それまで判断を止めるしかないように見えます。

止めなくて済みます。基準が完成する前でも、2本あれば方向は分かります。 その手順を、実際に取れた2本のデータで書きます。

結論

1本目と2本目を引き算して、差が縮んでいれば揃った方向に動いています。絶対値は要りません。

比べる相手は他人でも教科書でもなく、前回の自分です。心拍数の絶対値は個人差が大きく、同じ人でも気温や睡眠で動きます。だから他人の数字は借りられません。一方、同じ人の2本の変化なら、絶対値が分からなくても向きは読めます。

これは「基準値ができるまで待つ」よりずっと早く手が打てます。1本目は基準ではなく、2本目を読むための物差しとして使えばよいわけです。

私の実データ

直近のペース走2本です。この夏はサブエガを目標にゾーン2中心で走っていて、スピード持久力が落ちたと感じたために入れたペース走です。

日付距離平均ペースベストペース走行時間平均心拍最大心拍差
8/29(土)約9.0km4’40”/km3’41”/km42分06秒139 bpm171 bpm32 bpm
8/30(日)10.86km4’21”/km3’36”/km47分12秒145 bpm166 bpm21 bpm
差 32bpm 120 140 160 180 平均 139 最大 171 (bpm) 差 21bpm 120 140 160 180 平均 145 最大 166 (bpm)
同じ縮尺で並べた2本。上が8/29、下が8/30。数値はいずれも当日の実測値。

ここから何を読んだかを、順番に書きます。

何を見たか

見たのは2つだけです。平均心拍と最大心拍の差、そして平均ペースです。

差は32bpmから21bpmへ、11bpm縮まりました。平均ペースは4’40”/kmから4’21”/kmへ、19秒/km速くなっています。

どう解釈したか

差が縮んだだけなら、単に遅く走っただけかもしれません。ペース走は一定の強度を保つ練習なので、弱く走れば差は簡単に縮みます。それでは意味がありません。

今回はペースが19秒/km速くなって差が縮んでいます。この組み合わせが判断の材料になります。速いほうが上げ下げは出やすいのに、逆に揃った。つまりこのペースが、途中で無理をせずに保てる範囲に入ったということです。

ベストペースとの乖離も同じ向きに動いていました。8/29は平均4’40”に対しベストが3’41”で59秒/km離れていましたが、8/30は平均4’21”に対しベスト3’36”で45秒/kmです。どこかで跳ね上げた形跡が小さくなっています。

距離も同じではありません。8/29は約9.0km、8/30は10.86kmで、8/30のほうが2km近く長いです。長いほうで差が縮んだのなら、この向きは弱まるどころか強まります。 逆に短くして縮んでいたら、単に楽をしただけの疑いが残っていました。

比べた相手は自分の32bpmです。他人の数字も一般的な目安も使っていません。

何を変えるか

ここが本題です。データからはこう決められます。次はペースを上げず、距離か本数を増やす。

理由は、確かめたいことが変わっていないからです。8/30で分かったのは「このペースは保てる」という1点だけで、「このペースをもっと長く保てる」かどうかはまだ分かりません。ここでペースを上げると差が再び開き、それが強度のせいか距離のせいか切り分けられなくなります。

変数を1つずつ動かす。 判断の手順としてはこれだけです。差が縮んだらペースは据え置いて長さを足す、差が開いたらペースを落として揃え直す。順番を守っている限り、次に読むデータの意味が濁りません。

なお8/30の走行メモには「いい走りができた」とだけ残っていました。体感とデータが同じ方向を指した回です。ペース走では体感が当たらないこともあるので、一致した回は自分の感覚の校正に使えます。

実践手順

週2〜3回しか走れない前提での手順です。

  1. 1 同じコース・同じ時間帯・近い距離で2回走る
  2. 2 走り終わったら平均心拍と最大心拍だけ記録する
  3. 3 2本の差を引き算して、縮んだか開いたかを見る
  4. 4 縮んだらペースは据え置き、距離か本数を足す
  5. 5 開いたらペースを落として、もう一度2本そろえる
2本のデータで方向を読むまでの流れ。基準値が完成していなくても回せる。

条件をそろえるのがいちばん大事です。コースと時間帯を固定してください。 坂の量が違えば心拍は動きますし、朝と夕方では気温が違います。比べられない2本を並べても、差の変化は読めません。

記録するのは2つだけです。GPSウォッチの画面から平均心拍と最大心拍を写すだけなので、走り終えて30秒で終わります。距離やラップは後から見返せますが、この判定には使いません。

週2回しか走れない場合、2本そろうまでに1〜2週間かかります。 それでも構いません。基準値を作ろうとすると3回以上必要ですが、方向を読むだけなら2本で足りるからです。1本目を「失敗した回」と思わず、2本目の物差しとして取っておいてください。

ここまでの数字は私のもので、サブ3〜サブエガ水準のペースです。サブ4を目標にする場合、レースペースは1km平均5’41”/kmですから、ペース走はそれより少し速い強度に置き換わります。ただし置き換えるのはペースだけで、判定の手順は変わりません。 差が縮んだか開いたかを見る、変数を1つずつ動かす、という部分はそのまま使えます。

注意点・うまくいかなかったパターン

気温が違う2本は比べられません。 8/30は24℃でした。真夏と秋で比べれば、練習の質と無関係に心拍が動きます。季節をまたいだ比較は、差が縮んでも喜べません。

私の2本は距離がそろっていません。 約9.0kmと10.86kmで2km近く違います。今回は長いほうで差が縮んだので判断は変わりませんでしたが、逆だったら結論は保留にすべきでした。そろえられるならそろえたほうが、読み取りに悩まずに済みます。

2本では基準になりません。 分かるのは向きだけです。「21bpmが自分の合格ライン」とは言えません。合格ラインを持ちたい場合は、揃った回を3回ためて、その差の範囲を自分の基準として扱ってください。

差が縮んで、同時に遅くなっていたら意味が違います。 その場合は強度を保てるようになったのではなく、強度を下げただけです。今回は速くなって縮んだので両立と読みましたが、この2つはセットで見てください。差だけを追うと、遅く走るほど「良い数字」が出てしまいます。

グラフに細い切れ込みが出ることがあります。 8/30のペースと心拍のグラフには、2つが同時に落ちる縦の切れ込みが数か所ありました。幅が狭く、その後すぐ元の高さに戻っています。強度が崩れたのとは別のものなので、グラフの見た目で判定しようとせず、平均と最大の2つの数字で判定するほうが安定します。


本記事は個人のトレーニング体験の記録であり、医学的助言ではありません。練習強度の変更や体調に不安がある場合は医師・専門家に相談してください。